2009年2月27日金曜日

夕焼け空と母の顔

 昨年の夏(1998年頃)のことでした。家内は留守番をし、私と息子は群馬県の野反湖に2泊3日のキャンプに出かけました。私は初めての息子と2人きりのキャンプで少々不安がありました。息子の方も不安があったと思います。
 前橋・渋川を越えて西に曲がって草津方面に向かった時には、すでに夕暮れでした。夕日が山を照らし、空は茜色に染まっておりました。私は、車を運転しながら息子に語りかけました。「ほら夕焼け、きれいだね!」私は息子と自然の風景に共感を覚えたかったのです。ところが、息子の方は1テンポ遅れて答えました。「僕の目には、お母さんの顔しか見えない。」息子は意を決して母親を離れてきたのですが、他方ではお母さんのことだけを考えていたのです。
 キャンプ場に着いたのは夜中の10時過ぎでした。それでも息子はヘッドライトを付け、荷物を積んだリアカーを元気よく引いてテントを張る場所に向かいました。次の日もキャンプ場にいた他の子達と仲良くなって遊んだり、湖に飛び込んで泳いだり休日と自然を満喫していました。しかし、その夜、少し心細くなって、急遽、帰ることになりました。帰り道もまた母親の顔を思い浮かべていたかは分かりませんが、互いにほっとして家路につきました。
 このキャンプを通して、子供の成長の1コマを見る思いでした。一方では、親から離れて自立していこうとする心があり、他方では親との絆の中にとどまりたい、という心があります。その2つの心がほど良く綱引きをしながら、成長していくのだなと思ったのです。     (牧師 前野)